Eilex Focus

MP3やAAC等の不可逆デジタル圧縮は、周波数軸上の弱い信号を捨て去る事で情報量を減らしています。しかし、捨てられた信号の多くは重要な高調波です。その結果、音の明瞭度やニュアンスが失われ、音質が劣化します。Eilex Focusは残された信号から捨てられた高調波を作り出し、元の音声信号に加えることにより、音の音のディーテール、明瞭度、ニュアンス等を効果的に再現します。

  1. 広い用途
    Hi-Res化プロセスとの組み合わせ
    MP3プレーヤ、ヘッドフォンプレーヤ、カーステレオ、サテライトラジオ、デジタルラジオ、インターネットラジオ、TV等
  2. 対応技術
    すべての不可逆デジタル圧縮 (Lossy Compression) オーディオに対応
  3. 改善
    • 圧縮で失われた高調波の修復
    • 圧縮で失われたステレオイメージの修復
    • 音楽に含まれるデリケートなディーテールの復元
    • 明瞭度の向上
    • トランジェントの改善
  4. 特長
    • 信号の強度に関わらず安定した音質改善効果
    • 低歪み
    • 少処理量

デジタル圧縮とEilex Focus

デジタル圧縮

MP3やAAC等の音声のデジタル圧縮は、冗長性のある情報(取り除いても感知出来ない情報)を極力取り除いて行くのが基本です。それには色々なテクニックが使われますが、ほとんどの作業は周波数ドメインで行われ、若干は時間ドメインでも行われます。

最も代表的なデジタル圧縮は、周波数ドメインで信号の強さを見ながら、強い信号を残し弱い信号を捨て去る方法です。図1の左はオリジナルのスペクトルの一部で、強い信号と弱い信号が混在しています。このように強い信号の近傍に弱い信号が存在する場合、弱い信号は強い信号にマスクされて聞こえにくくなります。どうせ聞こえないのであれば捨ててしまおうと言うのがデジタル圧縮です。その様な判断から弱い信号を全て捨ててしまったのが右の図です。明らかに情報量が減ってデジタル圧縮の目的は達成しています。しかしこの様にして捨てられた微弱な信号の多くは高調波です。高調波は音の特徴を伝える重要な役割を持っています。このように高調波情報が捨てられてしまうと音質の劣化は免れません。特にディーテールやニュアンスが失われ、つまらない音になってしまいます。

図1 Digital Compression

それ以外に周波数ドメインでは、超高域や超低域の情報を減らしたり、サンプリングレートを下げたりする事がなされます。

一方、時間ドメインでは、強い信号の直前直後の弱い信号をマスクすることが行われます。ここでも、その様な状況の音は取り除いても感知し難いと言うのが理屈です。

ここで失われた情報は、その履歴が残されないため再現は出来ません。この種の不可逆デジタル圧縮はLossy Compressionと呼ばれます。

Eilex Focus

上述のように、デジタル圧縮で失われる情報のうち最も大きなものは、強い信号に隠れた弱い信号です。しかもそのほとんどは、音質に関係する高調波です。Eilex Focusは、MP3やAC3等の音源に残された基本波から効率よく適量の2次高調波を発生し、失われた情報を再現して、音質の改善を図ります。

しかもFocusプロセスは、音質改善に効果的な周波数帯域にのみ、選択的に高調波を加える事により、ソースの本来の音質を保ちながら明瞭度を改善します。(因みに、加えられる高調波のレベルは -30dB程度です。)

図2はEilex Focus の実際の動作の例で、3KHzの基本波から6KHz高調波が作られる様子を示しています。Eilex Focusは、基本波から2次高調波を効率良く作り出します。(注:2次高調波以外の高調波は極力抑えられています。)

図2 Harmonics Generation

次にEilex Focusの動作を、テストシグナルを使って示します。図3はマルチ・モジュレーション・スイープ テスト信号です。それぞれのスイープ信号はウォブルトーンとも呼ばれます。横軸は時間 (0-10 Sec)、縦軸は周波数 (0-24 KHz) です。

図4はこのテスト信号にEilex Focusを加えたものです。規則正しく2次高調波が発生し、高い周波数までカバーしています。一方、2.5KHzの中高域以下では高調波の発生を制限してあります。これは、主としてボーカルの基本波に変化を与えず、その音質に悪影響を及ぼすのを防ぐためです。

図3 Test Signal
図4 Focus Processed

Eilex Focusは、入力信号には直接タッチせず、高調波の発生やその周波数特性の設定を全てサイドチェーンで行っています。そのため正確なコントロールが行え、さらに歪みの発生が最小限に抑えられます。

Eilex Focusは一種のエキサイタですが、通常のエキサイタとは次の様な違いがあります。

通常のエキサイタは、発生する高調波の量が入力信号の強さに比例します。これは、リフェレンスレベルが大きく異なるTVやラジオ、CD、DVD、BD等が混在した場合に問題となります。これらのリフェレンスレベルの差は、フォーマットのスペックを見ただけでも20dB以上にもなります。従って、実際上-40dB 以下でも目的の動作を行う必要があります。

Eilex Focusは、信号の強さに関わらず所定の動作を行います。図5は低レベルのピンクノイズの周波数特性で、1 KHz付近で
-50dB 程度の強度です。図6はこれにEilex Focusを加えた結果で、2.5 KHz以上で信号レベルが周波数に対応して上がっています。これは発生した高調波が加えられた結果で、通常のレベルでの動作と変わりません。
(注:ここでは、Eilex Focusの動作を分かりやすくするため、その効果を若干誇張して示してあります。実際には微弱な補正で、ディーテールや明瞭度、トランジェント等に十分な改善効果が得られます。ソースによって補正量を調整する必要もありません。)

図5 Low Level Pink Noise (Original)
図6 Low Level Pink Noise (Eilex Focus Processed)

Eilex Focusは、デジタル圧縮されたソースをHi-Res化する際、アップサンプルの前段にプリプロセスとして使用すると効果的です。