Reed SFは、光カートリッジメーカーのDS Audioとのコラボレーションによって生まれた、Reedブランドの光カートリッジです。

光カートリッジ技術は、従来のMCカートリッジやMMカートリッジとは全く違うアナログサウンドを体験できるオーディオ技術です。磁気抵抗がなく、可動質量が非常に小さいため、針は驚くほど滑らかかつ正確に動きます。これらの特徴により、優れた音響性能が実現され、これまでも数多くのオーディオファイルから支持されてきました。
この技術のポテンシャルを最大限に引き出すため、Reedでは最適なハウジング素材の選定に重点を置き、音響的な中立性と効果的な振動減衰に着目しました。
カートリッジ本体の素材は、音響的に癖がなく、動作範囲全体にわたって高い減衰特性を示す必要があります。最適な素材を特定するために、アルミニウム、パンツァーホルツ(タンクウッド)、100% HDフェノール樹脂の3種類の素材を比較検討しました。同一形状の各素材サンプルに等振幅の衝撃波を当て、衝撃点から一定の距離で、発生した音響信号の減衰時間を測定した結果、一目瞭然の結論が導き出されました。



検証結果:
アルミニウム:約120ミリ秒後に消音
パンツァーホルツ:約70ミリ秒
100% HDフェノール樹脂:わずか約15ミリ秒
これらの調査結果に加え、表面粗さの低さ、高密度、優れた弾力性といった樹脂の付加的な利点を考慮し、Reed SFカートリッジ本体の素材として100% HDフェノール樹脂を選択しました。
耐久性と安定したパフォーマンスを確保するため、カートリッジハウジングは埃の侵入を最小限に抑える設計となっています。
REED SFカートリッジには、DS Audioの技術により左右チャンネルに独立したLEDと光検出器が配置されています。

仕様
信号出力:光電変換
チャンネルセパレーション:27dB以上(1kHz)
重量:9.8g
出力信号レベル:70mV
カンチレバー:サファイア
本体材質:HDフェノール樹脂/航空機グレードアルミニウム
針圧:2.0g~2.2g(2.1gを推奨)
針先:マイクロリッジ
SFコンプライアンス:12μm/mN
光カートリッジの基本原理
まず、光カートリッジとMM/MCカートリッジの検出原理の違いについて説明します。
MM/MCカートリッジと光カートリッジはどちらもレコードの溝を針を通して読み取りますが、通常のMM/MCカートリッジは、磁界の中で磁石(またはコイル)を振動させることで音楽信号を検出します。
一方、光カートリッジは、LEDとPD(フォトセル)を用いて影の変化量(明るさの変化量)を捉えることで音楽信号を検出します。
MM/MCカートリッジは磁界を遮断することで発電するため、磁石(またはコイル)が動く際には必ず磁気抵抗が発生します。

しかし、光カートリッジは明るさの変化(影の動き)のみを検知するため、振動系が動いても磁気抵抗は発生しません。
振動系に磁気抵抗が加わらないため、針先はスムーズに動きます。
これが光カートリッジ技術の最大のメリットです。
音楽信号を検出するために、MM/MCカートリッジはマグネット、あるいはコアとコイルを移動させる必要がありますが、光カートリッジの場合はわずか100ミクロンの厚さの遮光板を移動させるだけで済むため、移動質量は非常に小さくなります。
これも光カートリッジ技術のもう一つのメリットです。
MM/MCカートリッジ | 光カートリッジ | |
磁気抵抗 | 有り | 無し |
可動質量 | 重い | 軽い |
光学カートリッジの検出原理とは?
光学カートリッジの検出原理について詳しく説明しましょう。
光学カートリッジは、赤外線LED、遮光板、そして2つのPD(フォトセル)を用いて針の動きを検出します。
動作原理はシンプルで、LEDの前で遮光板が振動し、その後ろにあるPD(フォトセル)が明るさの変化を検出します。

1枚の遮光板からLチャンネルとRチャンネルの信号を独立して検出する方法について説明します。
上図は、LEDの位置から見た遮光板と光電セルの配置です。
レコードの溝が振動(斜め45度)すると、その振動が針先からカンチレバーに伝わり、遮光板も連動して振動します。
遮光板は前面LEDの光を遮るように振動するため、PD(光電セル)に入る輝度は明→暗→明→暗と連続的に変化します。
光電セルはレコードの溝の動きによって生じる輝度の変化を検知し、それに応じて出力電圧が変化します。遮光板の動きは、2つの独立した光検出器によって2つの独立したステレオチャンネルとして読み取られます。
遮光板の角度移動により、各光検出器は対応するチャンネルの情報のみを拾うことができます。反対チャンネルの平行移動による情報は読み取られないため、正確なチャンネルバランスとチャンネルセパレーションが確保されます。
逆PD(フォトセル)側では遮光板の動きが平行移動となるため、フォトセルの明るさは変化しないため、一枚の遮光板で左右チャンネルの音声信号を検出することができます。
この基本的な検出原理は、40年前の光電式カートリッジと全く同じです。
ここで重要なのは、PD(フォトセル)の出力は遮光板の動き=レコード盤の動きが電圧変化として出力されるため、純粋なアナログ音であるということです。
光カートリッジの音はデジタル音ではありません。
MM/MCカートリッジ | 光カートリッジ | |
出力 | アナログ | アナログ |



