Mr. Asakura NVS USB Cable Interview

2018年にNVSケーブルのフラッグシップUSBケーブル「Silver Inspire S SE USBケーブル」を自宅試聴室に導入された麻倉怜士先生。

今回導入に至った経緯や、オーディオだけではなく音楽という視点からの感想を伺いました。

 

 

 

Q:今回NVSのUSBケーブル「Silver Inspire S SE」を導入されましたが、ご使用になられてのご感想はいかがですか?

 

A:通常レベルのUSBケーブルで聴くと一つの音楽がまとまりきらずに、いかにもPCで音楽を聴いている感じになります。詳しく分析すると一つは質感の粗さで、もう一つはスピード感が無いので音の切れ味が出ないのです。

結果的に音楽を楽しむというレベルに到達するのは難しく、ボーカル、ベース、ピアノといった個々の要素はそれなりに出るのだが、一つの空間としての統一的な世界観というものを表現できていない嫌いがありました。

ところがNVSのUSBケーブルを使うと全く変わりました。PCオーディオという様なハードな概念ではなく、音源が持つ音楽性に非常に接近したというか、それを心地好く引き出している感じがします。オーディオ的な話をすると、とにかく基本性能がひじょうにに高い。S/Nが高いですし、低域から高域までしっかりとした周波数的な情報量を持ち、更にスピード感がもの凄く早いと感じます。音の立ち上がり、立ち下がりが非常に速いので、例えばベースの立ち上がりを通常レベルのUSBケーブルで聴くと、音が出た時の立ち上がりが甘く、それが音の弾力感を鈍らせているのですが、NVSは素晴らしく弾力感がキビキビとして、感覚としては音の粒がしっかりとあって、それが床に反射してまるで俊敏な速さを持つバスケットボール選手が目にも止まらぬ速さで弾けていくという様なスピード感が味わえます。

ボーカルの輪郭も全く強調はしていないのにしっかりとボディ感が出ていますね。こうしたところがオーディオ的にNVSは他のケーブルとまったく違うと思います。

 

 

Q:ありがとうございます。では少し角度を変えて、音楽的な見地からするといかがですか?

 

A:音楽的なエネルギーというか、この歌手は何を表現したいのかが凄く出てきますね。一例として私がプロデュースした情家みえさんのCheek to Cheekを聴いてきます。

情家さんの歌い方というのは一音一音に豊かな情感がこもっていて、各フレーズに立ち上がりの部分、メインの部分、それから減衰していく部分が、明確に存在します。もちろん音符の音程は変わりませんが、そこに入れる力の加減とかアーチキュレーション、息の抜き方とか、そういうテクニックを使っている歌手の世界をディテールまで見える様にしてくれるのがNVSケーブルだと思います。

このCheek to Cheekという曲で「Heaven」という歌詞が冒頭に出てきますが、最初のHeavenと2回目のHeavenは、実は意図的に歌い方を変えています。最初のHeavenは少しざらつかせ強調気味です。それに対し2回目のHeavenはひじょうに柔らかく歌っています。その辺りの歌手が持っている歌詞に対する解釈と音楽の時間的な変化による表現の違いのようなところは、通常レベルのケーブルでは一本槍になり尖がった輪郭感でキツく聞こえてしまう傾向があり、微細な情緒性の表現までは至らない。

ところがNVSケーブルで聴くと、情家さんが思っている「この時はこういう表現をしよう」、「この時は同じ言葉でもちょっと違うイメージにしよう」といったところがたいへん細やかに表現でき、音楽的な体験感としてはとてもワクワク感が伝わってきます。ただ、これは私がプロデューサーで「ここをこういう感じで」と情家さんに伝えたところが出ているということであり、プロデューサーだからこそ分かる部分なのですが、ここまでの表現力があるならば当然他の音源でも感情のニュアンスはとても深いと思います。

 

また、通常のケーブルでは個々の音は出ているのですが、その融合性というか空間性というか、一緒の空間で同時刻に演奏したノリの良さや空気の伝播性といった部分はなかなか表現できないです。ところがNVSケーブルはボーカル、ピアノ、ベースというシンプルな編成なのですが、その3人が同じ空間、同じ時間を分かち合っているという臨場感、雰囲気感がとても良く再現されています。互いに「コンタクト」している感じが伝わってきます。

具体的に言うと、ピアニストの山本剛さんはピアノの名手なので、ボーカルの後に入れるちょっとしたリフが絶妙なんですね。例えば「Heaven」と歌う所で、歌った後の2拍・3拍・4拍をどうするかというと山本さんはとても上手く合いの手を入れるんです。合いの手は絶対的に楽譜には明記されていないもので、その時の気分で出ます。その気分というのはボーカルが持っている気分とピアニストが持っている気分がどこかで一致する、もしくは不一致するという、出たとこ勝負の生の音楽から生まれる表情ですね。私はそれを大切にしてレコーディングしたのですが、その生々しい感じがNVSはとても上手く表現してくれます。

つまりHeavenと言った時の言葉に対してピアノがどういう反応をするのかという、駆け引きと場の雰囲気をNVSはしっかりと表現しています

「オーディオ的」で終わったしまう事なく「音楽」をしっかりと表現してくれる貴重なケーブルだと思います。

 

続いて2曲目を聴いてみたいと思います。小川理子さんのOh Lady be goodですが、これも一般的なUSBケーブルの場合はどうしてもPCオーディオ的な鳴り方しかしませんね。音が硬くて金属的な印象が残ってしまいます。 そうした質感的な部分に加え、時間軸的は音の切れ味が鈍いのです。この録音は切れ味感というか時間的な切り刻み感を重視して作りました。特にベースとドラムのスピード感、俊敏性を重視しています。それにプラスしてピアノの打鍵がひじょうに強いのでそれに負けないベースのエネルギー感やスピード感をレコーディング時は意識しました。でも一般的なケーブルではそのドラムがもたついたり遅く感じてしまいます。

また、小川さんのピアノは「ストライド奏法」という演奏方法なんですね。昔のスウィング時代のピアノ奏法で、4拍を均等に演奏するのが特徴です。それが通常のケーブルでは単なる拍ごとの強調感になってしまって、音楽的効果の表現とまでは至っていない感じでした。ピアノが荒く聞こえます。

そこでNVSにした時の印象ですが、これがまた大違い。まずピアノに関して言うと、ピアノそのものの質がグッと上がった感じがします。このセッションはスタンウェイのフルコンサートグランドピアノを使ってポニーキャニオンの代々木スタジオで行っているのですが、ここのピアノの音が圧倒的に素晴らしいんです。実は去年の情家さんのレコーディングの際もここを使用しました。ね色々なスタジオを回って最終的にピアノの音質でこのスタジオに決めた経緯があります。代々木のピアノは風格が高く、音色感も非常に多彩、更に密度感が高く、スタンウェイならではの華麗感があります。そうしたピアノの高質感が通常のケーブルでは出ないのですが、NVSはたいへん上手く表現してくれますね。

このピアノで弾いた華麗な音色感、抜けのクリヤーさ、スピード感が小川さんの奏法ととても合っているということほ良く表現していて、小川さんのピアニストとしての意志力みたいなものを感じます。

もう一つ、ピアノの音色感ですが、実はこの曲の最初の30秒位はマイナーで弾いています。メランコリーな感じで、このまま行くとマイナーなバラードかと思わせるのですが、途中からガラッと変わって凄く明るい曲調になります。この様に暗から明に行く時、当然音源としてピアノの表現力、それから奏者の表現力が録音された音の中には入っているわけですね。でも一般的なケーブルで聴くと音色的にフラットに聞こえてします。あまり寂しくもないし、逆にあまり楽しくもないといった無表情な傾向です。

NVSの凄いところは暗いところはちゃんと暗く表現をし、明るくなる瞬間は素晴らしいコントラストをもって明るく表現することです。まさにわれわれの意図通り表現してくれるという感想を抱きました。

あとは時間軸の切れ味が素晴らしく良いのでドラムの切れがシャープに表現されています。ドラムはバイソン片山さんという有名なドラマー。スネア、シンバル、バスを縦横に使ってひじょうに俊敏かつ軽快に演奏しています。その軽快感が通常のケーブルの場合、時間軸の切れ味が悪いので少々重くもたついて聞こえるのですが、NVSで聴くとドラムの切れが素晴らしい。そうすると何がいいかと言うと、空気中をドラムの音が飛んでいる様に見えるんですね。飛翔感があるという表現がいいかもしれません。通常ドラムのミキシングというのは全ての音を左右のどちらかに寄せる、もしくは中心に持ってくるのですが、この録音では意図的にドラムの音を左右にバラけさせています。この目的は名人のドラムソロというのは本当に凄く、それが1箇所だとどうしても塊に聞こえてしまい彼の凄さが伝わらない為、わざと左右に振って各音の要素を引き出してダイナミック感を出しているのですね。その意図をNVSケーブルはそのまましっかりと伝えてくれます。

これは恐らくNVSケーブルが一つ一つの音の描写が確実なだけでなく時間軸に沿って音が変化する表現がとても上手いからだと思います。結果としてスネアを叩いた時の皮の表情や、シンバルを叩いた時の音の反射感がひじょうにリアルに出ているのですね。

 

あと、この曲ではギターのセクシーさが素敵と思いました。

この楽曲でギターを入れた理由ですが、先般の情家さんのアルバムでサックスを入れてみたら非常に良い感じになったんですね。それで今回のピアノ・ドラム・ベースの基本トリオにもう一つ楽器を入れてみようという事になり、A面はギターを入れる試みをしました。

通常のトリオのスクエアな感じにプラスして、ギターのセクシーさというか、胸打つような感じを狙ったんですが、その辺りの意図が良くNVSでは表現されていると思いました。

 

 

それではもう1曲聴いてみましょう。次はクラシックでショスタコーヴィチの交響曲第4番ハ短調作品43、第一楽章のAllegretto Poco Moderatoで、ボストン交響楽団の演奏です。

この演奏はネルソンスがボストン交響楽団の常任指揮者になってグラウンホンと契約してショスタコーヴィチの全集を出しているのですが、ネルソンスは今世界的に非常に人気があって、他にもブルックナーの全集やベートーベンの全集といった大プロジェクトが進行している最中です。

ショスタコビッチも曲もひじょうに素晴らしく、ボストン交響楽団の能力を最大限に発揮しています。ライブ録音なのですがひじょうに綺麗に録音されています。しっかりとディテールまで捉えていて、ボストンシンフォニーホールの持つ空間感の美しさも同時に豊かに出ていて、かといって響き重視過ぎもせず直接音重視過ぎもせず、絶妙なバランスで録られた録音だと思います。

それを一般的なケーブルで聴くと、まず全体的な量感が出にくいと感じます。特に全合奏になった時の個々の音がなかなか出てこず、一つの塊感になってしまう。音の伸びがスーッと空間に吸い込まれるような感じがあまり出ていない感じがしました。個々の楽器が持っている個性や鳴り方の違いといったものが今一つ出てこない。ライブを聴いている感じはするのですが、やはりショスタコーヴィチが作ったスコアの精密さや、個々の楽器のやり取りが音楽的な醍醐味なんですが、そこが出てこないと思いました。

NVSですが、まず驚いたのは全合奏の感じが全く違いうという点ですね。先ほど述べた通り一般的なケーブルで聴くとどうしても全合奏が塊感として聞こえてしまうのでが、NVSでは弦楽器、木管、金管といった各楽器の個々の音が空間で混ざり合って総合的なハーモニーを作るというプロセスが一瞬にして分かります。つまり個々の分解能と全体の統一感が高次元でバランスしているのですね。

 

決して解像度指向でとにかく細かい所を再現しますよということではなく、かといって全体像を表面からなぞるのでもない。個々の楽器の持ち味を保ちながら、それらが集積された全体像という難しい表現をNVSはやってのけるので、その音楽表現力はまことに凄い。具体的な話をすると、途中で左からピッコロが、次に右からチェロが出てくる場面があります。左ではピッコロとシロフォンが同時に演奏しています。こうしたユニゾンでもピッコロの音とシロフォンの音の違いが格段に表現されています。音色が違う楽器が重なった時に、個々の楽器の音色感も分かりながら二つが重なることによって生まれる第3の融合音がとても良く感じ取ることができます。次に右からやってくる金管楽器は、金管合奏だけが持っている辺りを睥睨するような堂々感が素晴らしく良く出ていますね。さらにこの楽曲で面白いのはその後左のピッコロ・シフォロンと、右の金管楽器が空間上でやり合うんですね。そんな躍動的な空間を上手く表現していますね。こういう複雑な空気感、臨場感表現を伝えてくれるケーブルはなかなか無いと思います。

オーケストラの作曲者は、オーケストレーションした時の「この旋律はここに与えよう。この楽器とあの楽器を一緒にした時の効果をこう出そう」というイメージを基に作曲していくのですが、NVSはまさに作曲者の意図通りの表現をしてくれるのではないでしょうか。。

 

もう一つ感心したのは、この楽曲は最初の1分半を過ぎると非常に静かな演奏になって、各楽器がしっとりとした音になるんですが、この時の弦とかオーボエ、チェロといった個々の楽器の鳴り方が生々しく感情的に表現されていることです。大音量のスケール感もありながら、小音量にした時の音楽の表情の濃密さもしっかりと表現する。これもNVSの凄いところだと思います。一般的なケーブルだとどうしても大音量は良いけれども小音量では単一に聞こえてしまい微細な表情が失われるところがあります。

 

Q:ありがとうございました。一般的にオーディオファイルの方がケーブルを評価する時は、「低音が」「高音が」「解像度が」といったどうしてもオーディオ的に判断をしてしまう傾向があるのですが、ここで麻倉先生ならではの音楽的見地からのケーブルの着目点のアドバイスを頂けますでしょうか?

A:確かにNVSをオーディオ的に解釈するとf特バランスや立ち上がり、抜けの良さといった部分がありますが、やはりこのケーブルの凄いところは聴いていて音楽的なボキャブラリーが自然に涌いてくるところだと思います。例えば今のショスタコーヴィチの場合は弱音における各楽器の表情の違いや楽器間のやりとりのインターアクション、小川理子さんのピアノですとストライド奏法がもたらす曲のイメージがクリアにイメージでき、情家みえさんのボーカルですと言葉一つ一つに込めたニュアンスの違い……、そういった音楽的な楽しみというか音楽的な情報量が凄く多いと思います。ですので、ボーカルであれば歌詞や歌い方に込めた想いを受け取ることができますね。オーケストラであればスコアがはっきりと見えてくるような明確かつ明晰な表現性なんだけれども、さらに言えば、ショスタコーヴィチがどういう想いでこの曲を作曲したのか、ネルソンスの音楽性というのは一体どこにあるのか、そういった所にも着目して聴いて欲しいと思います。ここまで音楽表現力があるケーブルであれば、それこそ指揮者によっての表情の違いや楽譜の解釈の違い等を聴き比べるのも楽しいと思います。

もっと専門的な話をすると、是非とも楽譜を広げて聴いて欲しいと思います。そうすると作曲者の楽譜を指揮者がどういう解釈をして音にしているのかを探求でき、今までとは一味違うオーディオの楽しみ方になると思います。凡庸なケーブルではそもそもいくら探求しても表現してくれないので難しいですが、NVSケーブルであればこうしたより深い楽しみ方ができますね。

麻倉先生の試聴室

 

NVSのUSBケーブルは当日はノートPCとEXA SOUND社製のDACの間に接続されていた

 

麻倉先生の試聴室にはオーディオだけでなく世界中から集めてきた模型飛行機も数多く並んでいる

NVS USB Cable Page »